相続の法律関係わが国における相続の規定は、民法の第5編「相続」に定められています。【用語】 財産を残していく人のことを「被相続人」といい、被相続人の財産を受け継ぐ権利のある者のことを、「相続人」と呼びます。 遺言で、財産を承継する権利を法律で定められた者以外に引き継ごうという場合、これは「遺贈」となります。法律上は相続ではないということになります。 【相続人の範囲】 配偶者はいつでも相続人となり、配偶者以外には順位がついています。第一順位となるのは、被相続人の子、第二順位は被相続人の直系尊属(つまり両親)、第三順位は被相続人の兄弟姉妹です。 また、子が先に亡くなっていた場合、代襲相続というものが認められており、被相続人から見て孫にあたる者に相続されることもあります。 そのほかに、相続が不適格となるケースがあります。「相続欠格」と「相続廃除」です。 被相続人を殺害しようとしたり、遺言書を偽造したりした者等には相続の資格が失われ、相続欠格となります。 また、生前に被相続人に対して虐待を加えたり、侮辱したりした者に、家庭裁判所に請求することによって、相続の資格を失わせることもできます(遺言によって廃除することも可能)。 ![]() 【嫡出子と非嫡出子】 「嫡出子」とは法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子を指します。 「非嫡出子」とは、法律上の婚姻関係にない男女を父母として生まれた子を指します。認知されている場合、嫡出子と同順位の相続権をもちますが、相続分は嫡出子の半分となってしまいます。 【養子の相続権】 養子になると、養子は養親との間で嫡出子と同じ扱いとなります。養子は養親の相続人となり、さらに、実親が死亡した場合にも相続人となります。つまり、養子に行った場合には、養親と実親との 両方から相続を受けることとなります。 ただし、養子の制度には、実親との関係を消滅させてしまう、「特別養子制度」というものがあります。この養子制度のもとでは、養子と養親が完全に親子として取り扱われます。なので、この場合 には実親が死亡した場合でも、相続人となることはできません。 【胎児は相続できる】 まだ生まれていない胎児にも、相続権が認められます。死産であった場合には、相続は最初からなかったこととなります。 【法定相続分】 相続人が複数いる場合、それぞれの相続人には相続分が法律で決められています。もし被相続人の遺言書がある場合には、遺言書の指定の相続分となります。 [法定相続の割合] 同順位の相続人が複数いる場合は、各人それぞれ均等分割した額となります。 ●配偶者と子が相続人の場合 配偶者が二分の一を相続し、残りを、子が相続します。子が複数いる場合は、二分の一の額を人数分で均等分割します。(非嫡出子は嫡出子の相続分の二分の一となります) ●直系尊属と配偶者相続人の場合 配偶者が三分の二、残り三分の一を直系尊属が相続します。 ●兄弟姉妹と配偶者が相続人の場合 配偶者は四分の一、残り四分の一を兄弟姉妹で均等分割します。 【代襲相続】 相続人であったはずの者が相続の開始以前に死亡しているとき(例:父の死亡時、長男は数年前に他界していた、等)、または排除相続欠格や廃除されていたとき、被相続人の孫が相続人になることを 「代襲相続」といいます。もし孫もすでに亡くなっていた場合には、ひ孫に代襲相続されます。 代襲相続は直系卑属のほか、兄弟姉妹にも認められます。(例:兄弟姉妹が被相続人の相続開始以前に死亡していたとき、兄弟姉妹の子である甥や姪が代襲相続人となる) ただし、兄弟姉妹の場合の代襲相続は、甥、姪の段階までで、それ以上代襲相続されることはありません。 なお、相続を放棄した場合には、代襲相続は認められません。 【内縁の妻の相続権】 長年一緒に生活してきて、実質的に結婚していたとしても、婚姻をしていない場合には、その妻には相続権は認められておらず、相続人とはなりません。 ただし、夫が土地建物をもっていた場合、所有権を主張することはできませんが、使用する権利は認められる、という判例があります。 最近では夫婦別姓をとっている事実婚の夫婦も多くなってきていますが、事情により籍を入れない場合には、遺言書を書いておいてもらうなど、万が一のことを想定しておく必要はありそうです。 【相続人がいないとき】 相続人がまったくいない、という場合には、相続財産は相続財産法人と呼ばれる特別な法人の扱いとなり、相続人を探すための手続を踏むこととなります。 相続人が現れれば通常の相続手続となりますが、相続人が現れなかった場合、一定の期間経過後、「債権者への清算」「受遺者への分配」「内縁関係にあった者など、特別縁故者に対する財産分与」という 順序で配分を行って、残った財産があれば国庫へと帰属します。 特別縁故者とは、被相続人と生計を共にしていたり、被相続人の看護をしていた、その他なんらかの特別な縁故があった者、を指します。これは法人でもかまいません。 【贈与について】 贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がそれを受諾することによって成立する契約」です。 贈与は契約の一種として位置づけられるので、書面で贈与の約束をした場合には、原則として撤回することはできなくなります。これは「遺贈」との大きな違いで、遺贈の場合には相手の承諾なしに 取り消しや変更が可能です。 【遺贈について】 遺贈とは「遺言によって遺産の全部または一部を無償、あるいは、一定の負担を付して他の者に譲与すること」です。 遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の二種類があります。 包括遺贈は遺産全体に対する割合で指定するもので、特定遺贈は特定の財産をしていするものです。 遺贈を受けるものを受遺者と呼び、相続人も含め、誰でも(法人も)なることができます。ただし、遺留分の規定に反する遺贈はできないので注意が必要です。 なお、遺贈を放棄することも可能です。 相続は、引き継ぎたくないものまで引き継ぐこともあります「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」 民法896条に、相続の一般的効力を規定する条文があります。 ここでいう「権利義務」には、不動産や動産に関する権利、義務だけでなく、財産法上の法律関係や法的地位も含まれます。当然、借金もこれに含まれることになります。 つまり相続によって、被相続人の負っていた借金も引き継がれてしまうことがあるわけです。 しかし、自分が作ったわけでもない借金を背負わなくてはならないというのは不合理ですよね。このため、法律は、「相続選択の自由」を認めています。 【単純承認】 すべての財産を包括的に承継するものです。 仮に借金がいくらあってもすべて引き継ぐこととなります。 【相続放棄】 財産の承継をすべて拒否します。 【限定承認】 相続財産の分を限度として、債務(借金)の責任を負うことになります。 これらの選択をする期間として、「熟慮期間」を設けられています。 選択は、相続があったことを知ったときから「三ヶ月」以内に行わなければなりません。 もし何もせずに三ヶ月過ぎてしまったり、相続財産の全部または一部を処分してしまったりしてしまうと、単純承認したとみなされるので注意が必要です。 【形見分けに注意】 形見分けとして、被相続人が生前身につけていたものなどを相続人で分け合うことがあります。しかし不用意に形見分けをしてしまうと、「相続財産の一部の処分がなされた」こととなって しまい、法的には単純承認したとみなされます。相続放棄する必要があるのかどうか、まず確認してから行うようにしましょう。 |